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水俣病は、化学工場から海や河川に排出されたメチル水銀に汚染された魚介類を日常的に摂取した住民の間に発生した中毒性の神経疾患です。

神経の中でも大脳や小脳を中心として障害が起きます。

シリーズ「脳のしくみと水俣病」では、神経の形と役割やメチル水銀中毒の障害部位と症状などをわかりやすく解説しています。

水俣病について中毒ってどういう状態のこと?

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メチル水銀中毒を起こすことで、それぞれの場所でどのような症状が起きたかを解説していきます。
また、それぞれの場所は、人間の営みでどのような役割を果たしているかなどの解説もしています。

小脳

後頭葉

中心後回

横側頭回


中毒ってどういう状態のこと?

体の外にある物質が、そのままの形やガス状になり体内に入り、過剰な摂取になったことにより様々な障害を来す状態を総称して中毒と言います。

中毒は原因となる物質によって、

  • ガス中毒(一酸化炭素、硫化水素、塩素ガスなど)
  • 農薬中毒(殺虫剤や除草剤などの含まれる有機リン、パラコートなど)
  • 医薬品中毒(解熱鎮痛剤、向精神薬などの過剰服用)
  • 覚醒剤・麻薬中毒(モルヒネ、ヘロインなど)
  • 工業用品や廃剤中毒(灯油、ガソリン、酸・アルカリ製剤、メタノール、エタノールなど)
  • 自然毒中毒(トリカブトやスイセンなどの植物毒、ドクササコ、ドクツルタケなどのキノコ毒、フグや貝類などの魚介毒)
  • 家庭用品中毒(塩素系漂白剤、殺虫剤・防虫剤、乾燥剤、冷却剤、タバコなど)

があります。

中毒の症状は、原因物質の種類と過剰に摂取した量(回数や期間も含む)によって様々です。急性中毒により死亡に至る場合や、一過性の中毒症状のみで回復することもあれば、後遺症を残してしまうこともあります。体の中で自然に排泄されることがある一方で、解毒剤を用いなければ症状などが改善しない場合もあります。そのため、中毒症状が疑われる場合には速やかに専門医療機関に受診することが必要です。

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水俣病の原因物質は有機水銀であるメチル水銀ですが、メチル水銀に暴露した障害を全て水俣病というわけではありません。人がメチル水銀に暴露して運動障害、言語障害、視野狭窄、難聴などの中枢神経障害をきたすということは、20世紀半ば頃に英国の医師であるハンター(Hunter)とラッセル(Russel)らにより明らかにされ、これらの症状のうち、運動障害、言語障害、視野狭窄の3つの症状が揃ったものをハンター・ラッセル症候群(Hunter-Russel syndrome)と呼ばれています。この当時は、殺菌剤産生のために使用していたメチル水銀化合物に暴露した症例であり、その後、鉱山労働者などでのメチル水銀暴露(ハンター・ラッセル症候群)も知られています。

一方、メチル水銀が含まれた工業廃水が海に排水された結果、海水やその海水中のプランクトンなどにメチル水銀が蓄積され、それらを食物とする小魚や貝類、それらの小魚を食べた魚介類を人間が食物として摂取した食物連鎖により発症したメチル水銀中毒を水俣病と言っています。

熊本県水俣市の水俣湾で発生した水俣病と同じようなことが、新潟県阿賀野川流域でも発生したことがあり、第二水俣病(新潟水俣病、阿賀野川有機水銀中毒)と言われています。

詳しくはこちらもご覧ください。

水銀と健康(環境省国立水俣病総合研究センターウェブサイト)
http://nimd.env.go.jp/kenko/kenko_01.html

水銀Q&A(環境省国立水俣病総合研究センターウェブサイト)
http://nimd.env.go.jp/archives/faq/index.html