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中心後回

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大脳にはたくさんの脳回(脳のしわ)があり、それぞれに名前がついています

大脳は左右の半球が合わさってできています。下の図は左側の半球 ( 左大脳半球 ) を横から見ています。脳回は山脈のように盛り上がっていて、その周りは谷のような脳溝という溝 ( 境目 ) があります。脳溝は隣の脳回と区別されており、それぞれの脳回と脳溝には名前がついています。

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大脳の真ん中あたりには中心溝という境目が、そのすぐ前は中心前回 ( 青色 )、そのすぐ後ろは中心後回 ( ピンク色 ) という脳回があり、それぞれ、大脳の上部から斜め前の下に向かって帯状になっています。
中心前回は運動の指令を出しているところで運動野ともいいます。中心後回は感覚を受け取るところで体性感覚野といいます。
中心後回(体性感覚野)で感じる感覚はいろいろあり、傷害されたときも様々な感覚の異常が生じます。これらについては、「中心後回障害が起こるとどうなるの?」で詳しく説明しています。

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中毒(特にメチル水銀中毒)

高濃度のメチル水銀を含む魚介類を日常的にたくさん食べたことにより、メチル水銀中毒が発生しました。これが水俣病です。 メチル水銀は体内に取り込まれて脳にも蓄積することが分かっています。 水俣病の原因となるメチル水銀中毒では、大脳や小脳が障害されますが、大脳では視覚に関係する後頭葉、聴覚に関係する横側頭回の他、触覚や温痛覚に関係する中心後回が障害されます。

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水俣病のメチル水銀生物濃縮については小脳編参照 →


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血管障害(脳梗塞や脳出血)

主に大脳の血管が詰まったり破れたりすることによって生じる脳梗塞や脳内出血などの脳血管障害を、脳卒中といいます。
中心後回だけが障害される脳卒中は少ないですが、大きな領域が障害される脳血管障害では中心後回も病巣の一部に含まれることがあります。


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変性疾患 萎縮

中心後回だけが変性する疾患は少ないのですが、頭頂葉やその周辺が変性する疾患においては、中心後回も変性することがあります。


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認知症

高齢になるにつれて脳には、アミロイドβ、リン酸化タウ、リン酸化αシヌクレインなど、さまざまな不溶性蛋白が蓄積され、これが多くなりすぎると認知症などを発症してきます。
中心後回に蓄積してくるとさまざまな感覚障害が出現してきます。

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中心後回は体性感覚野とも言われ、主に体の表面にある皮膚や、関節や筋肉などにある感覚受容器で得たさまざまな情報(体性感覚といいます)を感じ取ります。
体性感覚には触覚、温度覚、圧覚、痛覚など体の表面で感じる表在感覚と、関節や筋肉などの動きや位置を感じる運動覚、振動覚、位置覚など体の内部で感じる深部感覚があります。

神経細胞の情報伝達については小脳編参照

触覚 ・・・ 触った時に「どんな感触か」が分かる感覚です。
温度覚 ・・・ 温かさ、冷たさを感じる感覚です。
振動覚 ・・・ 振動を感じる感覚です。
圧覚 ・・・ 押された時に「どの程度の力で押されたのか」が分かる感覚です。
位置覚 ・・・ 自分の手や足が「どの位置にあるのか」を感じ取る感覚です。
運動覚 ・・・ 自分の手や足が「どの方向に動いているのか」を感じ取る感覚です。

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中心後回が壊れると、表在感覚や深部感覚に障害が起き、様々な感覚の異常が生じます。

触覚の異常 ・・・ 触ったものの感じ方がわからなくなる
温度覚の異常 ・・・ 熱いものや冷たいものの区別ができなくなる
圧覚の異常 ・・・ 圧迫されている事を感じなくなる
痛覚の異常 ・・・ 痛いのに痛く感じなかったり、反対に、痛くないのに痛みを感じる
振動覚の異常 ・・・ 振るえているものを触っても振るえていることが分からない
位置覚の異常 ・・・ 腕や足がどの位置にあるのか分からなくなる
運動覚の異常 ・・・ 腕や足がどの方向に動いているのか分からなくなる

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体の表面にある皮膚や、関節や筋肉などで感じる体性感覚の情報は、脊髄、脳幹(延髄、橋、中脳)を通って大脳に入り、視床を経由して中心後回の表面(大脳皮質)にある感覚神経細胞に届けられます。感覚の種類によっては、少しだけ通り道が違いますが、基本的には左手や左足のような左側の情報は、反対側の右側を通って右の大脳に入り、右手や右足の情報は左側を通って左の大脳に入ります。

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冷たい水に足を入れてしまったり、手でボールを握ったり、お腹や歯が痛かったりするときの感覚は、脊髄や脳幹の特定の場所を通って、中心後回に届けられます。そして、足、手、お腹、歯の感覚を感じる場所は、細かく区別されています。運動の指令を出す場所も、同じように細かく区別されています。

これらについては、「運動と感覚を担当する大脳皮質の地図」で詳しく説明しています。

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大脳の表面は大脳皮質といい、たくさんの神経細胞があります。

大脳皮質は場所によって役割が決まっています。中心前回の、足の指や足首を動かす指令を出す神経細胞は、大脳の頂上の内側 ( 青色 ) にあり、手の指を動かす神経細胞は、黄色やオレンジ色の付近にあります。また、唇(ピンク色)、舌、あご(赤色)などを動かす神経細胞は下の方にあります。

中心後回も、似たような分布になっています。

ペンフィールドの脳地図

中心前回は体を動かす指令を出す神経細胞がたくさんありますが、中心後回には体の感覚(痛み、熱い・冷たい、振動など)を感じる神経細胞(感覚神経細胞)がたくさんあります。そして、中心後回のどこの部分が、体のどこの感覚を感じているのかは、中心前回とほとんど同じですが、お腹の中の腸などを動かす神経細胞は中心前回にはありません。痛み(腹痛など)を感じる場所は中心後回の一番下の方にあります。

このようなことを詳しく調べたのはカナダの脳外科医ペンフィールドですが、その後のいろいろな研究によってより 詳しいことが分かってきています。

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ホムンクルスとはラテン語で小人のことです。

大脳皮質のうち、それぞれの体の部分の運動や感覚の役割を担っている部分(足、腕、体幹、手、眼、鼻、口など)のうち、手と口の面積が他の部分に比べてとても大きいのが分かります。その面積の違いを小人の体に置き換えて面積で表したものが下の小人の絵で、ペンフィールドのホムンクルスと言われています。

手と口の面積が他の部分に比べてとても大きい

人間は手の指を器用に動かして細かな作業ができます。

また、言葉を話したり、食べ物を噛んだり飲み込んだりするために、口やあごなどもたくさん動かしています。その運動量に比例して、大脳皮質の面積も大きくなっています。

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動かせないけれど感じるところがある

痛みや温度などを感じている大脳皮質の地図は、運動とほとんど同じですが、まったく違うところもあります。頭、歯・歯ぐき、お腹の中、性器などです。たとえば、お腹の中の腸は、自分では動かせませんが、痛みは感じます。その痛みを感じている場所は、面積は少ないですが、大切な役割を果たしています。

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手と口の神経細胞の数が他の部分に比べてとても多いのが人の特徴ですが、他の動物も、様々な特徴を持っています。

例えば犬は、嗅覚にしめる神経細胞がとても多く、人よりはるかに多くの嗅覚細胞を持っており、人の数千倍の嗅覚があるといわれています。

聴覚も聞き取れる音の範囲が人より広いうえ、人が聞こえる音量の約 6 分の 1 程度の音でも聞き取れるといわれています。

※ 人の嗅覚と聴覚は中心後回とは違う別の場所で感じています。