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横側頭回

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横側頭回は大脳の側頭葉の上面にある脳回です。
空気や頭蓋骨の振動が耳の器官(外耳、中耳、内耳)に伝わり、その振動が神経の聴覚刺激に変換されて、最終的には脳内に入り横側頭回の神経細胞に伝わって音として感知されます。そのため、横側頭回は一次聴覚野ともいわれます。ブロードマン脳地図でも41野、42野など、領域を示す学術名(Area)の訳語である「野」が使われますが、住所の番地のように41番、42番ということもあります。

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脳について学ぼうシリーズ 1~3で取り上げた部位も一緒に表示してあります。 メチル水銀による傷害が起こりやすい部位を確認してみよう。

ブロードマン脳地図における横側頭回の番地

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ブロードマン脳地図では、横側頭回に41 番、42 番という番地がついています。
41 番、42 番は外側表面からしか見えません。

ブロードマン脳地図については後頭葉編参照

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中毒(特にメチル水銀中毒)

水俣病はメチル水銀が体内に取り込まれることで脳にも障害が生じます。障害を受ける場所は、小脳(運動のバランス)、後頭葉(視覚)、 中心後回(体性感覚)に加えて、横側頭回もその代表の一つです。その結果、聴覚障害が引き起こされます。

水俣病のメチル水銀生物濃縮については小脳編参照

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血管障害(脳梗塞や脳出血)

大脳を養う動脈には前大脳動脈、中大脳動脈、後大脳動脈などがあります。このうち、中大脳動脈は大脳基底核や側頭葉に動脈血を供給する大切な動脈です。この中大脳動脈が動脈硬化や脳血栓などにより内腔が閉塞したり、破れて出血すると、横側頭回に障害が引き起こされること があります。


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頭部外傷

側頭部などを強打することにより硬膜動脈が破綻し急性硬膜下血腫が生じた場合、出血量が大量になっていくと側頭葉が圧迫されます。その結果、側頭葉の一部である横側頭回が圧迫 されて障害を受けることがあります。


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炎症

脳の表面を覆う髄膜や脳そのものに細菌やウイルスなどが侵入して炎症を起こすことがあり、それぞれ髄膜炎、ウイルス性脳炎などといいます。側頭葉を中心に炎症が起こると、側頭葉の一部である横側頭回も障害が起こることがあります。特にウイルスの中ではヘルペスウイルスは側頭葉を好んで侵すことが知られています。

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横側頭回は外から聞こえてくる音が集まってくる場所で、いろいろな音の意味を理解するための重要な役割を担っています。そのため、横側頭回は一次聴覚野ともいわれます。横側頭回の近くには、言葉の意味などを理解する場所などがあり、それらが協力しあって、周りの話し声や人の動きなども理解することができます。

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横側頭回(一次聴覚野)は左脳と右脳にありますが、両方の横側頭回が完全に破壊されると、機能が全て失われ、音を全く感知することができなくなります。この状態を「皮質ろう」といいます。一方、機能が一部でも残っていると、音は聞こえますが、その音の意味(言葉周りの様子、音楽)を理解できなくなってしまいます。このような障害を聴覚失認といいます。

感覚性言語野については後頭葉編参照

聴覚失認

音は聞こえているが、その音が何か認識できない状態 聴力や音の特徴を聞き分ける能力は十分で、音がどこから聞こえてくるか、音がどう移動しているかの判断はできるのに、聞こえる音が何の音かが分からなくなるのが聴覚失認です。そのものを見たり触ったりして他の感覚に頼れば、音の正体が理解できます。

聴覚失認の分類 音は、言語音、環境音、楽音の3種類に分けられます。

環境音失認 ・・・ 犬の鳴き声、サイレン、雷の音などの物や自然現象の音が何か分からない。
純粋語聾 ・・・ 聴覚失認のうち、言葉の意味だけがわからなくなり、何を言われているか理解できない。
感覚性失音楽 ・・・ 聴覚失認のうち、音楽的な面での聴覚的認知障害で、音楽を聴いても曲名が分からない、聴いたことがあるのか分からない、音楽を楽しめない、など。

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音の正体

音の正体は、物体の振動です。
音を出す物体は振動することによって音が出るのです。
この音の振動を音波といいます。
振動がいろいろなものを介して伝わることで、耳に届きます。自分ののどに触ってみると、吐き出す空気がのどを振動させて声を出していることが分かります。音が離れた所に伝わるのは、音を出しているものの振動が空気に伝わり、空気の振動となってわたしたちの耳に届くためです。

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音は空気を伝わって耳に届きますが、実は空気以外にもいろんな物が音を伝えることができます。
糸電話の場合、音を伝えているのは糸です。しかも、糸は固体で、気体の空気よりも音をしっかり伝えてくれます。
空中を伝わる音はだんだん弱くなりますが、固体の物は音を弱めることなく伝えることができます。

音の三要素

人はさまざまな音を分けて感じることができます。
音の性質を決める要因の最も基本的なものを「音の三要素」といい「音の大きさ」、「音の高さ」、「音色」の3つで構成されています。
この中で、音の大きさと音の高さについては、測定機器で数値化できますが、音色は音の波形のため、同じ音の大きさと音の高さであっても 異なる音の聞こえ方をする特性があります。楽器の違いを聞き分けられるのもこの音の波形の違いを聞き分けているからなのです。

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音は、音を出すものの振動が空気などの物質をふるわせ、音波となって伝わります。その音波が耳に届いて鼓膜をふるわせることで、音として聞こえるのです。そのため、音の振動を伝える物質がない真空状態では、音は聞こえません。
真空度の高い宇宙空間では、音は全く聞こえません。

音の大きさ・・・音圧「dB(デシベル)

音の高さは1秒間に空気が振動する回数であり、周波数「Hz(ヘルツ)」で表します。 振動は1往復して1回の振動となるため、1秒間に1回振動することを1Hz(ヘルツ)、1秒間に10回振動することを10Hzといいます。周波数が少ないと低い音に聞こえ、多いと高い音に聞こえます。
音階で1オクターブ高い音は周波数が倍であり、1オクターブ低い音は周波数が半分という関係になっています。人の耳に聴こえる範囲は20~20,000Hzといわれます。
健康診断の聴力検査では、1,000Hz(低音)と4,000Hz(高音)の2つの周波数の音を、一定の大きさで聞こえるかを検査しています。

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音の高さ・・・周波数「Hz(ヘルツ)」

音の高さは1秒間に空気が振動する回数であり、周波数「Hz(ヘルツ)」で表します。
振動は1往復して1回の振動となるため、1秒間に1回振動することを1Hz(ヘルツ)、1秒間に10回振動することを10Hzといいます。周波数が少ないと低い音に聞こえ、多いと高い音に聞こえます。音階で1オクターブ高い音は周波数が倍であり、1オクターブ低い音は周波数が半分という関係になっています。
人の耳に聴こえる範囲は20~20,000Hzといわれます。健康診断の聴力検査では、1,000Hz(低音)と4,000Hz(高音)の2つの周波数の音を、一定の大きさで聞こえるかを検査しています。

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音色

音色は、音波の質の違いによって生み出されるものです。
同じ音圧、同じ周波数であっても、その波形が異なることで、人はその音色の違いを区別します。
例えば、同じ大きさ、同じ高さの音を聴いても、ピアノとバイオリンの音は明らかに違うことが分かります。これはどんな「倍音」が含まれているかによって波形が変わるからです。
倍音とは、周波数の整数倍の振動です。音は基本の倍音が重なることで「音色」が構成されます。倍音が多くなると明るい音に、少ないと暗い音となって聞こえます。

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音の性質には大きさと高さがあります。例えば、音が大きすぎると、とてもうるさく不快に感じたり、よく聞きとれないこともあり、反対に、小さすぎると何も聞こえなく感じることもあります。また、例えば、ピアノの鍵盤を叩いた音が左端と右端の鍵盤で高さが違うように、音にはそれぞれの高さがあります。歌声も、高い声(ソプラノやメゾソプラノ)、低い声(バス、バリトンなど)、また、その中間の声(テノールなど)など様々です。

日常生活の中では声や楽器のほか、動物の鳴き声や乗り物の音、街の中の騒音など、様々な音が聞こえてきますが、それぞれ、音圧と周波数の関係は下の図のようになっています。
街の中の騒音、乗り物の音、雨の音などは、動物の鳴き声や人の話し声などと違い、一つの音だけでなく、たくさんの音が集まって、あたかも一つの音のように聞こえているので、周波数の幅も広くなっています。
ただし、このように日常生活で聞こえる音は、様々な音の周波数の音うち、限られた幅の音だけになります。

日常生活で聞こえる音

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人が聞き取れる音の周波数はおおよそ20Hzから20,000Hzであり、この間の周波数の幅を可聴音域、音を可聴音といいます。可聴音より少ない周波数の音は超低周波音、多い周波数の音は超音波といいます。

人の場合 10代後半から 20代の頃が、可聴音の範囲の低音も高音もよく聞こえますが、高齢になっていくと徐々に聞きにくくなり、10,000Hz以上の音は聞こえなくなってきます。

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動物の聞こえる周波数(可聴音域)を比べてみよう

哺乳類の中でも人の可聴音域は狭いほうですが、周波数の異なる複数の音を聞き分けることのできる高い能力を持っています。一方、可聴領域が広い動物は、人間とは違い、異なる周波数の音を聞いて区別することが不得意です。また、周波数が同じ音でも、音圧 ( 音の大きさ ) が違うと聞こえたり、聞こえなかったりします。例えば、カラスは人間より可聴音域は狭いですが、音圧が低い小さな音を聞き分ける能力があります。

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聞こえる音には、空気の振動による音(気導音)と骨の振動による音(骨導音)があります。

気導音は、空気の振動が耳の穴(外耳)に入り、鼓膜を振動させ、その奥にある中耳、内耳にその振動の情報が伝わり、最終的に蝸牛神経を伝わって脳(横側頭回)に届けられて聞こえる音です。骨導音は、主に耳の周りにある骨が振動し、外耳や中耳を通らずに、直接内耳に届けられ、その振動の情報が脳(横側頭回)に伝わって聞こえる音です。

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外の空気の振動は、外耳の奥にある鼓膜をふるわせ、中耳にある3つの耳小骨に 伝わり、さらに奥にある内耳の蝸牛に集まります。

この振動が気導音になります。それとは別に、耳の周りの骨に伝わった振動は、外耳や中耳を通らずに、直接内耳の蝸牛に伝わります。この振動が骨導音になります。これらの音を感じるのが蝸牛内部にある有毛細胞です。

有毛細胞は、片耳に約15,000個並んでおり、感覚毛という細い毛のような束を持っています。蝸牛に音の振動が伝わると、感覚毛が揺れて、音を電気信号へと変換します。これが聴神経を経て脳に到達すると、音が聞こえるのです。そのため、有毛細胞が加齢や騒音の影響などで傷つき、壊れてしまうと、音を感じ取りにくくなります。一旦壊れてしまった有毛細胞は、二度と元には戻りません。

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蝸牛で作られた音の電気信号は、蝸牛神経によって脳に伝達されます。最初は脳幹の延髄に伝わり、さらに橋の外側毛帯核、中脳の下丘を通って大脳に伝達されます。大脳では内側膝状体を経由して横側頭回の神経細胞に到達して音として聞こえることになります。
蝸牛は左右の耳の奥の内耳に一つずつあります。

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