研究成果

水俣病発生当初に剖検された症例の末梢神経病理に関する研究

第67回日本神経病理学会総会学術研究会 ポスター発表 2026.06.26

丸本 倍美(国立水俣病総合研究センター)
植木 信子(株式会社 神経病理Kiasma&Consulting ウェブアーキテクトラボ)
八木 朋子(株式会社 神経病理Kiasma&Consulting メディカルデザインラボ)
藤村 成剛、中村 政明(国立水俣病総合研究センター)
菰原 義弘(熊本大学大学院生命科学研究部 総合医薬科学部門 代謝・循環医学分野 細胞病理学講座)
新井 信隆(株式会社 神経病理Kiasma&Consulting ニューロパソロジーセンター)


環境省・国立水俣病総合研究センターでは、水俣病に関する貴重な試料を永久保存する目的で1996年にリサーチリソースバンク棟を建設し、以降、貴重な病理標本の収集および保管作業を継続的に実施している。また、保管されている病理標本を用いて、新たな研究活動も実施している。メチル水銀中毒患者においては、中心後回、横側頭回、後頭葉及び小脳を中心に病変が惹起されることが知られているが、末梢神経に病変が形成されるか否かについては見解が分かれている。1956年に水俣病が公式確認されてからの数年間は、原因がメチル水銀化合物と判断できなかったこと、また、末梢神経系を含む全身諸臓器において、どのような病変が惹起されるのか否かについて不明な点が多かった。そのため、末梢神経の標本が作製されていない症例も存在する。よって、本発表では、水俣病発生時から3年間(1956-1959年)に剖検された症例における、末梢神経系の病理標本作製の有無及び末梢神経病変の有無について報告する。

【水俣病とは】

水俣病は、化学工場から海や河川に排出されたメチル水銀化合物に汚染された魚介類を日常的に摂取した住民の間に発生した中毒性の神経疾患である。熊本県水俣湾周辺を中心とする八代海沿岸で発生し、その後、新潟県阿賀野川流域においても発生が確認された。

【メチル水銀中毒により傷害されやすいとされる部位】

下図の赤色で示している、中心前回・中心後回、後頭葉、小脳、横側頭回、感覚神経がメチル水銀により傷害されやすいとされている。

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【本研究に用いた症例及び部位】

1956~1959年に剖検された症例:15例
末梢神経系に注目して解析を実施

【末梢神経サンプリング及び所見の有無】

1956年に剖検された症例

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1958年に剖検された症例

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1959年に剖検された症例

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1956~1959年に解剖されたいずれの症例においても典型的なメチル水銀中毒による中枢病変は惹起されていた。しかしながら、末梢神経系はサンプリングが実施されていない症例、また、サンプリングされていても病変はほぼ認められなかった。水俣病発生当初の症例において、メチル水銀により末梢神経系が傷害されていた可能性は低いことが推測された。


謝辞

本研究を発表するにあたり、熊本大学・技術部・中川雄伸氏に心より感謝申し上げます。
この研究成果は、環境研究総合推進費(JPMEERF20255M06)により実施したものです。